実際の配色を決めてゆく作業法には、3通りある。
- 色・濃さ・明るさを全て同時進行で決めていく
最終完成形のイメージがしっかりあるならこれでいい。髪型や装備パーツの選択まで同時進行にしてもいい。補色・警告色・アースカラー・伝統色などの知識があるならおすすめ。
- まず色を決めてから、濃さ・明るさを調整していく
自然な思考のように見えるが、実のところ独特のカンが必要になるので推奨しにくい。たとえば、赤色と薄紅色と茶色はUI上は同軸線上にあるものの最終的な意味合い・印象が全く違う。色から決めると、探りを入れたつもりで、別の山に登ってしまう事態が頻発する。迷いなく赤なら赤、茶色なら茶色と、順にブレなく決め続ける判断力が要る。ようは一筆書き・一発OKじみた進め方になるので、ちょっと万人向けではない。
- まずモノトーン(白黒、紺、セピア等)で大部分の濃さ・明るさを決め、のち色を充てていく
グリザイユ画法のようなもの。「パーツ選びの段階」「ステッカーを割り振る段階」「色や柄をつける段階」それぞれに集中して作業を進められる。本作のキャラクリでは、金属光沢やステッカーの都合で生じてくる黒や金銀を制することが、まま調整の要点になる。はじめに彩度を度外視するこの作業法は、その黒*1や金銀*2といった特殊な色を考慮に入れやすい。最終的なまとまりを重視するならオススメの方法。1〜2色系統でまとめると地味になりがちなので、3色以上を意識して、うまい配置を探ろう。
配色は「何色を使うか」よりも「各色の配置」が重要になる。たとえば、「赤色と青色が使われているキャラ」としても「赤と青がそれぞれ5割」と「赤が9割、青が1割」では、印象が全く異なる。使う色味が増えても同じで、何色を使うかはもちろん重要だが、その振り分けはさらに重要。
- 定石がないので参考レベルではあるものの。
- 色面積の差で全体像を考える
各色(メインカラー、サブカラー、アクセントら)の配分差を大きくするほど様式的で堅い印象になる(軍服やナイトドレス、作業服など)。逆に各色の分布を均等にするほど非日常性を帯びていく(アイドル衣装やスポーツウェア、スーパーロボットなど)。キャラの印象が定まらなくなったときは、この観点から全体を見直してみるといいかもしれない。
- どこに何角形配置かでバランスを考える
上半身だけ均等にすると三角形めいた配置になる。下半身(腰と脚)だけでも三角めく。四肢全身で均等にすると五角形めいた配置になる。つまり色の配置は、三角形・五画形で考えるとバランスを見当づけやすくなる。なお多角形の観点は、バランスを取るためのものとは限らない。バランスを崩す目的(たとえば印象の重心を腰から上半身へ移したい場合や、手足を目立たせ胴体を引き絞って見せたい場合など)にも捉え方の補助になる。
- 人柄と構えから部位を考える
多くの流派がゲーム画面へ胸/背中を向ける構えを取るので、1P側か2P側かで見える姿が大きく違ってくる。これも着色方針の補助線として役立つ。たとえば前でも後ろでも同じ印象にしたいなら、シャツとマントを似た色合い・似た世界観で塗ればいい。前のめりな印象にしたいなら、1P/2Pどちらでもよく映る肩・拳・ヒザ等を目立たればいい。予測不能なキャラや超硬派なキャラっぽくするなら、そんな均整はあえて一切与えないようにしてもいい。
- 上記全部が関係して、目立って左右非対称なパーツ(「浄光の髪飾り」「宿命の胴衣(上)」「夜叉女の着物」「武人の肩当て」など)は配色の難度が上がる。そのかわりうまくいけばキャラを立体的に、意味深にできる。エクストラパーツやステッカーでわざとアシンメトリーにする場合も同様。
- 判断が難しければ、革は革らしい色、鉄は鉄らしい色などシンプルに決めてしまえば違和感は無くなる。また布の場合は、麻布から錦まで多種多様な材質があるので、オシャレができなくなるわけではない。
色の濃さ・明るさは、レギュラーキャラクター達と並び立てる程度を狙ってみよう。濃い色や明るい色ばかり使うとオモチャっぽく安っぽい印象になってしまい、薄い色や渋い色ばかり使うと素朴なモブキャラっぽくなってしまう。
- レギュラーキャラと見比べにくいなら、武器のデフォルトカラーを指標にしよう。誰にでもそこそこ馴染むはずの武器が、浮き/埋もれすぎていないかどうか。
- 「朧月夜の深林」「叢雲神社境内(夜)」等、ステージの採光によって色味が均らされることも多い。全ステージでそこそこの視認性が得られればOKとしてもいい。
- 本作のキャラクリはアニメ・マンガのノリと親和性が高いため、原色や蛍光色で思いっきりオモチャ・フィギュアっぽく突き抜けてしまうのもアリ。ただし、人間が刃物で斬り合うさまをオモチャと割り切ると、倫理的に少し危ない気がしなくもないのでそこはプレイヤーの判断による。いわゆる、キャラ立ちで押し切れるかどうかがポイント。
- リアリティを追求したい場合は、「綺麗さ華美さを殺し切ることはできない」と割り切ることが必要。本作のキャラクリでは汚しや陰影を配置しきれないので、渋さ・重々しさの追求はすぐ限界が来る。肌も含め、無傷な部分が多くできてしまうことを大前提として、できる範囲で色柄やステッカーを詰めていく。何も加えなくて良い部分、手を抜ける部分を探すことも重要。
- どうにも加減がわからないなら、ひとつの目安として。全部位をゴムだと思ってみるといいかもしれない。ツヤのあるゴムの程度。ざらついたゴムの程度。柔らかいゴムの、硬いゴムの、薄いの厚いの、とにかくゴムの範疇…っぽく意識していけば、過剰なビビットさを回避しつつ、キャラの鮮やかさも残しつつ、ほどほどに収束させられる。
- とくに天使や悪魔、精霊や妖怪、ロボやメカを作る際は、妥当な濃さがどの程度なのか、感覚が狂ってゆきやすい。ゴムでもシリコンでも板金でもマジパンでも何でもいいので、バロメーターとなる例えを持っておくと、色調の逸脱を防げる。なお全キャラ・全パーツを同じイメージでやる必要はない。つど変えてもいい。
ほか、忘れられがちな細部について少し。
- 頬紅(いわゆるチーク)に注意。着色と同時に立体感も変える微妙なメイクで、慣れないと加減が難しい。記号的に赤くすれば若くなるというものではない。肌色よりわずかに明るく、頬が丸く膨らんでいるように見せたほうが、若々しい顔になることもある。痩せこけた顔にする場合も同様で、青くするよりは日陰に思わせる塩梅から探ったほうが早かったりする。つける目的を意識して塗ろう*3。
- 眉毛は、なるべく薄め・暗めにしておくことをオススメする。眉毛を濃く明るくすると、キャラ選択のバストアップ表示で眉毛だけ強く目立ちすぎてしまう。髪色より控えめにしておくのが無難。
- 眼球の白目。種族「人間」のデフォルトは無難にすこやかに明るめ。種族「オートマタ」のデフォルトはもっと白め。生々しさやシリアスさを出したいなら灰色っぽい加減も検討してみよう。わずかに赤黄色で不健康したり、わずかに青紫で不気味にしたりと、けっこう印象を左右させられる。